野口三千三氏の書籍から「人間は猫よりやわらかい」という言葉に出会ったときに、まさかと思った記憶があります。
今では猫が身近にいる生活をしているものとして、猫の動きの一つ一つを見ても理想だなと思ってしまうほどです。
それなのに、人の方が柔らかいのかと思うと、人間の能力はまだまだ使えていない、もしくは眠っているのだろうと痛感します。
三千三氏の動きの柔らかさをこう定義しています。
「からだの一部に生じた状態の変化が、次から次へと順々に伝わってゆく、その伝わり方のなめらかさを柔軟性という」
柔軟性というと、開脚したり、前屈してペタンと上体が床や体についているやわらかさを思い浮かべてしまいます。
私がイメージするのは、骨一つ一つを自由に動かせて、力を伝えていく動きです。
背骨や関節の一つ一つを波のように伝えていく。
力もそのように全身に伝えていくことが動きのやわらかさでもあると思います。
四つ足動物にとっての曲芸的な直立姿勢を基本姿勢とし、その上であらゆる動きをする高度な運動能力を持っている人間が猫より硬いはずがない。
人間は猫より硬いのだという固定概念を打破してほしいと。(三千三氏)
この固定概念や先入観を捨て去ることが、全てにおいて重要なのだと改めて感じます。
私も含めて、何かを変えたいと思ったときに、自分はこうだと決めつけていては何も改善しないのだと思います。
これは日常生活においても、スポーツ競技においても同じことでしょう。
キーワードとしては、からだの重さを重力に任せるということ。
それは、力が抜けている、立ち姿勢は骨に任せるということ。
・緩められた筋肉が液体のようにとらえられると、骨を通って鉛直方向(重力)を感じ取りやすくなる
・余計な力が抜けることで、感覚が敏感になる
【体験】
ぜひ、やってみてもらいたい体操を一つご紹介します。
〈腕のぶら下げ〉~力が抜けている状態を実感する~
すっきり真っ直ぐ立った状態から
腕がぶら下がった感じを味わうために、左右のどちらか片方にバランスを少し崩して片方ずつやってみましょう。
(頭も傾き、肩が少し下がる感じ)
腕の重さを確かめるために、小さく上下にゆすってみましょう。
(固まっていると、最初はゆれている感覚がないかもしれません)
床と足の裏との間で作り出された上下動は膝→腰→胴体→肩へと伝えるという流れ。
腕全体がゆれることで、力が抜けている上体を実感できると思います。
からだ全体で腕ゆすりをやっているようで、気持ちよさを感じられると良いです。
どうでしょうか、終わった後は肩が軽くなっている、スッキリ楽になっている感覚はあるでしょうか。
小さな動きを感じ取るセンサーも必要になります。
これも感覚を得る練習になります。
日常生活やスポーツの場面で筋肉に頼りがちですが、自分のからだの重みと重力を利用して動き出すということはとても奥が深く、やわらかく力が抜けているからこそ、力が発揮できる。
力を効率良く伝えて発揮することが、とても重要だと思います。