人は酸素(O₂)を取り入れ、体内で作り出された二酸化炭素(CO₂)を排出することで生命を維持しています。鼻と口ではどちらでも呼吸ができる構造になっていますが、その効果や健康への影響に大きな違いがあります。
【酸素より二酸化炭素】
皆さんは1分間に何回呼吸をしていますか?
心を落ち着かせて、一度チェックしてみてください。
1分間の呼吸回数やその1回に吸う量と違いはありますが、健康な人は1分間に10回から12回になります。
回数が多い人は呼吸過多であり、回数が少なくても1回の吸う量が多い場合も呼吸過多になります。
(1回の呼吸で500mlほど、1分間で5Lから6L)
数字で見ても自分がどれくらいの量を吸っているのかイメージしづらいですね…
酸素は体内で95%から99%の飽和状態にあり、体や生命維持のために常に利用されているので100%になることはありません。
酸素を利用するために、意外にも二酸化炭素が重要になります。
二酸化炭素は食べものや酸素をエネルギーに変える過程で生成されます。
実は呼吸の目的は体内にある余分な二酸化炭素を出すことです。出しすぎると酸素を上手く利用できないという仕組みになっています。
正しく呼吸をすれば、二酸化炭素も適正量になり、酸素を上手に利用でき体の各部位が正しく機能する。
そして運動時に最高の体力・持久力・パフォーマンスを達成できます。そのためには、鼻呼吸に戻すことです。
【鼻呼吸の重要性】
1.フィルター・浄化・加湿・温度調整機能
鼻腔は鼻毛や粘液、繊毛によってほこり・花粉・細菌・ウイルスを除去し、吸気が肺に適した温度(約37℃)・湿度になるよう環境整備します 。これにより肺や気道への刺激が減り、感染や炎症リスクも低下します 。
2.一酸化窒素(NO)生成による酸素取り込み促進
鼻粘膜から発生するNOは気道・血管を拡張し、酸素の肺への取り込みと全身への循環をスムーズにします 。
3.呼吸の制御とガス交換効率の向上
鼻呼吸は肺の下のほうまで十分に空気を送ることができるので、ガス交換が効率的に行われます。さらに、穏やかで深い腹式呼吸になることで横隔膜や呼吸筋が活性化し、呼吸全体の効率が向上します。
4.健康・美容・成長への効果
体内に取り込める酸素の量が20%増え、免疫力・脳機能・疲労回復・代謝・運動能力などが改善されます。
特に子供が鼻呼吸をすることで舌を上あごにつけることができるようになり、顔が正常に発達する助けになります。
【口呼吸の影響】
①口呼吸は口の中が乾いて酸性になりやすい。そのため歯や歯茎の病気になりやすくなる。
また睡眠時に口呼吸だといびきや睡眠障害の原因になり、起床時に口の中が乾いている。
②口の中のバクテリアの種類が変わり、口臭の原因になる。
③花粉・細菌・ウイルスが直接、体内に侵入しやすくなる。
④口呼吸の子供は猫背になりやすく、気管が弱くなる。
⑤慢性的な口呼吸の人は、疲労感・集中力や生産性の低下・不機嫌などの症状が出る
⑥運動中に酸素の取り込み効率を下げ、持久力やパフォーマンスの低下、怪我のリスクも増加する。
【呼吸トレーニングとCO₂耐性(BOLT法)】
呼吸の質を高めるためには、CO₂(二酸化炭素)への耐性を高めるトレーニングも有効とされます。BOLTスコア(息止めで「息をしたい」と感じるまでの時間)を使い、鼻呼吸をしながらCO₂耐性を段階的に強化していく方法があります。これにより、低呼吸・高CO₂状態への適応力が向上し、集中力や運動パフォーマンスも向上するとされています。
鼻呼吸を習慣化することは、呼吸器や免疫機能を守り、酸素・二酸化炭素のバランスを整え、健康・パフォーマンス・顔貌にまで良い影響を与えてくれます。
特に安静時や睡眠時には口呼吸ではなく、鼻呼吸を意識することが肝心です。CO₂耐性を高めるトレーニングも併せて行うことで、呼吸全体の質が向上し、日常生活の快適さや健康状態に大きな差が生まれます。
(トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法 パトリック・マキューン)